神楽坂の高級割烹で「茶懐石」を初体験! 釣りから始まった世界にまた一つ新たな扉が開いた

料理・酒・器

駒場東大前の『りた』に続き、またまた「うつわソムリエ」コミュニティの新企画で、「茶懐石」を初めて体験してきた。

駒場東大前の隠れた名店「りた」で3万円のランチを満喫してきた ~うまい料理と貴重なうつわ、そして仲間とのうつわ談義を堪能する「うつわのわ」~
京王井の頭線「駒場東大前駅」近くに、看板も出さず、住所も非公開の隠れた名店があるということで、うつわソムリエ仲間と休日の午後に行ってきた。 店の名は「りた」という。「他人を利する」という意味の「利他」からきているそうだ。客を喜ばせるために、...

「会席」の方は、普段から仕事などでよく行くし、部長に昇格した時に会席のマナー研修も会社で受けたことがある。仕事の接待の場で恥をかかないように。しかし、「茶懐石」はまったく初めてで知識もゼロだ。

「会席」と「懐石」の違いとは?

今回、「カイセキ」にも「会席」「懐石」の二種類あることを改めて認識した。これまで漠然と「カイセキ料理」と呼んでいたが、AIによると以下のような違いがあるらしい。

会席料理:宴席で酒肴を楽しむための正式な日本料理。先付、前菜、椀物、向付、焼物、煮物、揚物、食事、甘味など多彩で豊富。主役である酒を飲みながら少しずつ楽しむ構成

会席料理のイメージ

懐石料理:茶会前に空腹を満たす軽い簡素な食事。一汁三菜が基本で、飯・汁・向付などが少量ずつ出る。主役はあくまで抹茶。

茶懐石の基本形

現在では厳密に区別されずに使われることも多いようだが、少なくとも「茶懐石」と言えば茶事の時に出される懐石料理のことを指す。

茶事とは、亭主が少人数の客を招いて、食事(懐石)と濃茶(こいちゃ)・薄茶(うすちゃ)を順に供してもてなす、茶の湯で最も正式なもてなしの形だそうだ。

つまり「茶懐石」は茶事の一環なので、当然、いろいろな茶道のお作法が求められる。

人生初の茶懐石体験の舞台は?

休日の昼12時ちょうど、神楽坂にあるミシュラン一つ星の割烹『多仁本(たにもと)』で人生初の茶懐石体験は始まった。12時ちょうどに始めるのも「正午の茶事」の作法の一つだそうだ。

そこに表千家の教授で、うつわソムリエでもある先生が来られて、素人集団である我々うつわソムリエ仲間のために、ゼロから茶懐石のイロハを教えて頂いた。茶道の資格は複雑で、流派によっても違うので素人には簡単には分からないが、「教授」というのはかなりエライお方のようだ。

まずは客の役割を理解する

今回は畳ではなく、カウンターに向かって椅子に座っての形式だ。やはり現代では、何時間も畳に正座となるとそれだけでハードルが極めて高くなるので、まことに有り難かった。

カウンターでの茶懐石を学ぶ

まず、客の序列・役割を習う。正客(しょうきゃく)・次客(じきゃく)・三客(さんきゃく)・・・末客(お詰め)の順に座り、それぞれが果たす役目を教わる。一番大事なのは、最初に亭主から料理などを受け取って次の人に回していく「正客」。そして最後の「お詰め」も料理や器を返却する2番目に大事な役割。

ちなみに私は「次客」だったので、隣の正客さんのマネをするだけで済んだので、お気楽にうつわや料理の写真を撮りまくることができました(笑)

次に、クリアファイルを折敷(おしき:料理を載せるお盆)に見立てて、受け取り方と回し方の基本を習う。

お盆の回し方にもお作法がある

そして懐紙(かいし)をもらい、どういう時にどのように使うのかをレクチャーしてもらう。現代のポケットティッシュに相当する万能紙と思えばいいようだ。

現代のポケットティッシュ?懐紙

以上のような最低限の知識だけ頭に叩き込んで、後は実際の流れの中でのOJT(オンザ・ジョブ・トレーニング)ということで、いよいよ懐石開始!(懐紙?)

茶懐石のお作法とは?

実際の茶懐石の流れの中では、実に多くの新たな知識を学んだのだが、あまりにも多いので、特に印象に残った点だけいくつか挙げてみる。

  • 最初に御飯と汁椀の蓋をそれぞれ左右の手で同時に開ける(片方ずつではない)
  • 御飯は何度おかわりしても最後までずっと一口は残す
  • 御飯のおかわりからは、主客が「お任せを」と言って亭主からお櫃を受け取り、自分でよそう。
  • その後、お櫃を次客へと順番に回してそれぞれ自分でよそう(残り人数を踏まえて自分が取る分量を考慮する)
  • 次の人に渡すときには必ず「お先に」と言う
  • 茶事なのにお酒もガンガンと注がれる

    意外にも酒もどんどん飲んでいい

  • 向付(むこうづけ)とは取り皿に相当するもの。料理が代わると途中で懐紙で拭く
  • 小吸椀の蓋も取り皿代わりに使う

    小吸椀の蓋を裏返して取り皿に

  • 箸置はなく折敷に箸の先を直接のせ、箸頭は折敷の縁にかける
  • すべての食事を食べ終わったら、全員そろって「箸落とし」で終了の合図を音でする

    掛け軸や生け花も大事な構成要素

茶道の深淵を垣間見た?

一つの料理が出るたびに、お作法、料理の内容、そしてもちろんうつわの説明!をしてもらいながら進めるので、通常のペースよりずっと時間がかかり、すべて終了したのは15時半ごろだった。

でも、その3時間半があっという間に過ぎた。知らないことのオンパレードで、脳細胞がガンガン刺激され、途中からバグってくる感覚だ。

とても一度では覚えきれないし、本来は、単に手順を覚えるだけでなく、その流れの所作をいかに優雅に、気高く、そしてさりげなくできるかどうか、が問われるのだろう。それが単なるお茶を「道」として究める、ということなのだろうから、どこまでも奥が深いということは体感した。やはり茶道は恐るべし!

表千家と裏千家

まったくの門外漢である私でも、茶道に表千家と裏千家があることぐらいは知っていたが、『表』と『裏』の正確な違いや、両者の関係性などは全然知らなかった。

にわかで聞きかじった程度だが、『表』が本家で伝統重視なので門戸を絞る、一方の『裏』は分家で大衆化・拡大志向。なのでシェアは『裏』の方が高く、現代のカルチャースクール市場を席巻している。ただ何故か、月謝などの諸費用は大衆向けのはずの『裏』の方が高い、といったようなビジネスモデルの違いがあるようだ。

カルチャースクールでは裏千家が主流?

単純化すると、「伝統と保守」の『表』、「革新と普及」の『裏』という構図で、キリスト教で例えると、『表』がカトリックで『裏』がプロテスタントみたいなものか? ただ、キリスト教のように激しい教義上の対立はないようだ。

谷本さんちの『多仁本』

ちなみに、今回の舞台を提供して頂いた神楽坂『多仁本』の谷本さんご自身も、表千家で茶道の修行をされているそうだ。

店主自らお茶も点ててくれた

今回はほとんど料理について触れてこなかったが、まず、最初に出てきた「普通の御飯」からメチャクチャうまかった。 「どうやったらこんな御飯が炊けるんだ!?」と皆で驚いた。茶懐石では御飯がメインでもあるので、その出来栄えが重要な要素になるらしい。

その御飯が象徴するように、次々と出てくる料理はいずれも「さすがミシュランが認めた店だ!」と唸る内容だ。

さらに、出てくるうつわがまたスゴイ。向付には楽家のうつわが終始鎮座し、その後も明末(みんまつ)のうつわや、オールドバカラなどなど、王道の貴重なうつわが当たり前のように次々と出て来る。

楽家の向付

「『りた』は珍しいもの、『多仁本』は王道」と、店の常連でもあるうつわソムリエ仲間が教えてくれた。

さりげなくオールドバカラが

「箸ソムリエ」になっちゃった!

そして、この茶懐石で茶道の奥深さだけでなく、「箸」の役割、存在感、そして翠色の竹箸が放つ色気?に魅了された。特に、最後の「箸落とし」というイベント?に大きな衝撃を受けた。

箸を左に押して折敷に落とす

上品な茶懐石の席で、あえて全員が息を合わせて箸を折敷に落とし、その音を外で亭主が食事の終わりの合図として聞いている、という何とも言えない風流なお作法。いったい誰が最初にそんなことを思いついたんだろう??

そして箸の話題から、「箸ソムリエ検定」なるものが存在するということをきいた。そこで早速、家に帰って検索してみたら、運よく翌週に検定試験があるとわかったので、すぐに申し込んだ。そのあたりの顛末はこちらの記事に詳しい。

釣りを始めたらナゼか「箸ソムリエ」になっていた。「釣りから世界が拡がった」シリーズの次は「箸」だ!
世の中「ソムリエ」ばやりである。ワインソムリエに始まり、コーヒーソムリエ、お茶ソムリエなどの飲料に関するものだけでなく、葉巻ソムリエ、温泉ソムリエ、そしてタオルソムリエなるものまであるらしい。 正式な資格から単なる自称まで含め、なんでもかん...

別の茶懐石教室にも復習しに行ってみた

さらに、奥深い茶懐石のお作法を一度だけではとても覚えきれないので、もう一度復習してみようと、翌週に別の料亭で茶懐石教室に参加してみた。

茶懐石教室で復習を

『多仁本』では、料理を担当する谷本さんと、茶事の指導を担当する教授のお二人で我々への対応をして頂く、という何とも贅沢な布陣であったが、ここでは料亭の店主が一人で料理と茶事の両方の対応をされた。

なので、こちらは料理人の視点が「主」で、お茶は「従」という位置づけだったので、茶懐石のお作法の詳しいレクチャーはあまりなかった。

逆に、料理については色々と詳しい話がきけた。茶懐石の御飯は、あえて「炊き立ての、まだ芯がわずかに残る、米が水分を吸い込もうとする瞬間の状態(煮えばな)」で出されるらしい。これは水分をたっぷり含み、お米が最も甘みを放つ瞬間の瑞々しさを味わってもらうためだそうだ。

皆が感動した『多仁本』のあの御飯の美味しさには、やはり秘密があったのだ!

そして、懐石料理の後には店の2階にしつらえられた茶室に移る。そこで、裏千家の名取でもある店主が、割烹着から着物に着替え、自らお茶をたててくれた。

こうして、茶懐石から茶会へ、という「茶事」の一連の流れを一通り体験することができた。

店内にある茶室でお茶を頂く

釣りから始まった世界にまた一つ新たな扉が開いた

このように、釣りから始まった世界がまた一つ新たな扉を開け、ついに茶道という究極の様式美の世界にたどりついた。

ここまでの流れは以下の通りだが、一つ新しい扉を開けると、その先にまた別の新たな扉が次々に続いていて、それらを夢中で開けている間に、釣りとはほぼ関係のない世界にまで流れてきた。

釣り船舶1級免許魚さばき教室包丁研ぎ教室堺打包丁 → リゾートクラブ → ワインスクールうつわソムリエ湾岸タワマン移住 → 茶懐石 → 箸ソムリエ

ここからまた、茶道や箸のさらに先へと、釣りから始まった世界の拡張がどこまで続いていくのか、もう自分でも予測がつかないな(笑)

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