令和時代でも続く「大人の学芸会」たる株主総会の季節が今年も終わった。果たしてこの茶番劇をいつまで続けるのか?

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私にとって、6月の風物詩と言えば、先週書いた「ゴルフフェスタ」と並んで「株主総会」である。若いころは投資家の立場で多くの企業の総会に出席し、今は企業側の立場で総会に出席しているからだ。

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今年も6月下旬に多くの企業の株主総会が開催され、無事に総会を終えた今頃は、世の経営者たちが1年で最も寛いでいるタイミングではないか?

今がいちばん寛いでる時期?

リハーサルはまるで学芸会?

株主総会が近づく6月に入ると、本番に向けた様々な準備が各社で始まる。進行の台本作成や、投影する画像の準備、想定質問に対する回答の作成などなど、毎年、膨大な手間ヒマがかけられる。そして直前には、本番さながらのリハーサルまで行われる。

そこでは、株主に扮した社員からの質問に答えたり、動議が出た場合の対応方法、さらには、みんなでそろってお辞儀するタイミングを合わせる練習までなされる。

お辞儀をそろえる練習まで・・・

まるで学芸会の準備のような、傍から見るととても滑稽なことを、初老の大人たちが大真面目にやっているのだ。すべては株主総会という茶番劇のために・・・

株主総会は大人の学芸会?

本番でのメインイベントは質疑応答コーナー

そして迎える本番当日、そこでは一字一句、すべてが台本通り分刻みのスケジュールで予定調和的にこなされていく。実質的な議論や決議をする、という雰囲気は皆無だ。

その中で唯一、台本通りにいかず、何が起こるかまったく予測できないのが「質疑応答コーナー」だ。どんな内容の質問が、誰に飛んでくるか分からないので、壇上に並ぶ経営陣全員が当事者となる。従って、みなが最も緊張する瞬間であり、最大の修羅場でもある。

なので、この質疑応答コーナーがたいした波乱もなくつつがなく終われば、みな一様に安堵の表情に変わり、実質的に株主総会は終了した気分になる。

質疑応答コーナーがメインイベント

「学芸会」には多大なコストがかかっている

この大人の学芸会のような茶番劇のために、すべての企業は毎年、相当なコストをかけている。会場代、ライブ中継費用、お土産代(さすがに最近は廃止した企業が多いが)、などの直接的な経費だけでなく、目に見えないコストもある

議長である社長を筆頭に全経営陣が何週間も前から、準備や予行演習に時間をとられる。質疑応答に備えて各部署が膨大な想定問答集を作成させられ、担当役員はそれをすべて覚える。総会当日には、一般社員も会場周辺の道案内係や会場内要員として狩りだされる。1円の収益も生まないイベントのために・・・

それでも、株式会社が株主のためにきちんとした対応をする年に一度の唯一の正式な場なのだから「当然のコストだ」、というのは全くその通りである。長年、投資家の立場で企業に接してきた身からすると、むしろその感覚の方が自分の中では今でも強い。

しかし・・・である。

「株主総会で否決された!」の真実

2026年6月23日に開催された日産自動車の株主総会で、某社外取締役の再任議案が否決された!と大々的に報道された。それだけ見ると、あたかも株主総会の当日に、会場で採決をとった結果、そこで初めて否決されたように思うだろう。

しかしあれも、総会が始まる前に事前に集まっていた票で既に否決されたことは分かっていて、総会の場ではその結果を発表したに過ぎない。総会本番でガチで採決を取って、その場に出席している株主の賛否によって初めて否決されたわけではないのだ。

「否決されました」という直接的な表現をあえてせず、「過半数の賛成を確認できませんでした」という回りくどい言い方で「否決された」という事実を認めざるを得なかったのだが、賛成率は48.3%しかなかったようだから、当日の会場の投票で決まるような接戦でもなく、事前に完敗が確定していたのだ。

日本の株主総会においては、事前に集まっている議決権行使書で議案の賛否は実質的にすべて決まっていて、本番の採決で結果がひっくり返ることはほぼ皆無だ。だから否決された議案は、株主総会が始まる前に既に決まっているのだが、それを「株主総会で否決された!」と表現する。

株主総会で否決された!?

事前に票を集めるのが総会での最大のミッション

日本の株主総会においては、ほとんどの議決権行使書は事前に企業に返送されており、当日、総会に出席したうえでその場で初めて賛否を表明する、という株主はほぼいない。だから、株主総会を開いてみて、初めて賛否の結果が分かる、ということは、まずないのだ。

なので、企業にとって株主総会で最も大事なことは、いかに事前に多くの議決権行使書を回収するか、ということである。総会担当部署はそのために躍起になる。

そして、まずは総会成立の要件である過半数の行使書の回収を目指す。それができなければそもそも総会が開けないので。だから、過半数ギリギリの場合には、「反対票でもいいからとにかく行使して!」ということになる。反対票でも出席者数にはカウントされるので、賛否より、まずは成立そのものを優先するのだ。

議決権行使書を集めるのが最大の仕事

「茶番劇」たる由縁

事前にこのような涙ぐましい努力?が行われているので、総会が成立するために必要な過半数の出席(議決権行使)があるか、各議案について出席者の過半数の賛成があるか、などはすべて総会を開催する前に決まっている。なので、総会本番で採決を取っても取らなくても、結果は変わらないのだ。

そもそも総会の場で、厳密に出席者の賛否を数えることも、普通はしない。賛成者の数も数えずに「賛成多数につき可決されました!」という予め用意された原稿を議長が読みあげるだけだ。だから、総会本番は、既に結論が分かっている台本通りに進めるだけの「茶番劇」というわけだ。

結果は事前に分かっている

「株主総会」というリアル集会の場はナゼ必要?

では、多大なコストをかけて株主総会という「集会」を開く理由は何なのか? 実際は総会を開く前にほぼすべて議案の結果が分かっていて、実質的に採決をする場ではないにもかかわらず。

それは、会社法第296条1項に「定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と定められているからである。

開催の形態も、基本的には会場に株主を集めて行う「リアル総会」しか認められていなかった。しかしコロナ禍を経て、物理的な会場に株主を集めずにオンラインで開催する「バーチャル総会」も認められるようになった(一定の要件を満たす必要あり)。

しかし依然として、株主総会そのものを開催しなくてよい、ということには令和の時代においてもなっていない。

個人株主とのコミュニケーションのための場?

法律で定められているので株主総会という体で開催はしているが、既に決まっている事実を公表するだけの場ならば、実質的な中身は「プレス発表」と同じではないか?

「今回、株主様にお諮りした議案は、こういう結果になりました」という結果発表の場にすぎず、質問をするのが記者か個人株主か、の違いだけだ。

プレス発表と変わらない?

では、実質的には意味のないセレモニーに何の意味を持たせるか? それは小口の個人株主とのコミュニケーション(という名のガス抜き?)の場としての意味か? 実際、海外では、バークシャー・ハザウェイは、投資の神様「ウォーレンバフェット」のご宣託を直接聴ける場としてお祭り的なイベントとなっていた。日本でも、マネックスなどは同じようなノリみたいだ。

泡沫株主のガス抜きのための場?

実際の株主総会の場面において、「質疑応答コーナー」で発言するのは、100株や1000株程度しか持たない小口個人株主だけだ。機関投資家などの大口株主は、事前に議決権行使書を送っており、そもそも当日は出席などしない。

もし機関投資家が意見表明や質問をしたければ、株主総会の議場での質問などではなく、反対票を投じるか、総会とは別のIR等の場で、直接、マンツーマンでやり取りをする。昨今では投資家側にも「スチュワードシップコード」というタガがはめられているので、投資先企業との日常的な「対話」を求められているという事情もある。

だから株主総会での質疑応答は、そういう日常的な企業との対話の機会が乏しい小口の個人投資家に自ずと限られる。そしてその場で、およそ議案とは関係のないような内容・レベルの質問まで飛び出す。年に1日だけ「株主様」と崇めてもらえる唯一の晴れ舞台だから、日頃の鬱憤?をすべてそこで吐きだす。

株主様!

なので、個人投資家向けにももっと日常的に企業と対話する機会を作れば、わざわざ形式的な株主総会という場を設ける必要はますますなくなる。企業側に小口個人投資家とコミュニケーションを密にするインセンティブがあれば、の話だが。ただ、一般消費者を顧客とするBtoC企業なら、ユーザーの声を直接拾う場として、メリットもあるかもしれない。

喜ぶのはアクティビストだけ?

これらの例外的存在が「アクティビスト」(いわゆる「モノ言う株主」)だ。日本では「村上ファンド」を源流とするアクティビストは、「大口機関投資家」と「小口個人投資家」の中間的な位置づけになるか? 株数的には20%程度まで買い占めることもあるので、大口機関投資家並みの影響力を持つこともあり、実際、アクティビストに買い占められた企業が消えていくという例も出てきている。

モノ言う株主

彼らは株付けした企業の総会に出席し、そこで延々と質問という名の演説をブッて、議事の進行を狂わせる。一人で1時間ほど演説を続ける猛者もいるそうだ。予定調和の「学芸会」を、たった一人のアクティビストが破壊できるのだ。

なので、物理的にリアルの株主総会を開催して喜び、活躍するのはアクティビストだけではないか?

喜ぶのはアクティビストだけ?

むかし総会屋、いまアクティビスト

彼らの主張の太宗は、株主還元やガバナンス改善などで、内容的には至極真っ当なものが多く、昔の総会屋のような単なるスキャンダルの暴露ではない。

ただ、スキームを少し変えてはいるが、やっていることの本質は昔の総会屋と変わらない。根底にあるのは「恫喝」である。

「自分の主張を受け入れなければ総会に行って邪魔をするぞ!」という脅しが背景にあるというのは総会屋と同じビジネスモデルだ。実質的にそれで総会の決議の結果が変わるわけでなくても、企業としては穏便に済ませたいので弱腰になるのだ。

結果がひっくり返るわけでないなら、企業側も毅然と対応すればよさそうなものだが、昔の総会屋全盛時代のトラウマがそうさせるのかもしれない。

総会屋時代のトラウマ?

なので、株主総会という集会を開くことで恩恵を受けているのは、昭和時代は総会屋、令和ではアクティビスト、といことだ。その対応のために企業は膨大な手間ひまをかけている。

しかし、それで企業のガバナンスが少しでも良くなるのであれば、それも必要悪ということか?

ん!? なんか最後までマジメ過ぎないか? どこにも笑いがないぞ!?

このマジメだけの記事を最後まで読む人なんているのか??

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