「アリの一穴」から崩れるのは堤防だけじゃない。クルマも、人体も、そして会社も ~早期発見、早期治療に勝るクスリなし~

総帥の独り言

千葉県印旛沼の堤防が決壊した。

「千丈の堤も螻蟻の穴を以って潰ゆ」という韓非子の言葉、日本では「蟻の一穴」として知られる。ご存知の通り「小さな欠陥や油断が大きな破滅を招く」ことへの戒めだ。

今回の印旛沼は、長雨で地盤が緩んでいるところに想定以上の水が流入したため決壊したようで、アリの穴から崩れたわけではないだろう。

しかし、どんなに強靭に造られたモノでも、アリの穴のようなほんの小さな原因から崩れてしまう、というのは本当だと実感する経験をした。

堤防が決壊!

クルマが突然死!?

出張などが続き、1ヶ月ぶりにやっと自宅に帰って、久し振りにドライブがてら海にでも行こうと思い、ガレージのシャッターを開けた。そして、ホワイトベースのリモコンキーを押してドアを開錠しようとしたが、反応がない。

押すボタンを間違えたかと思い、確認しながらもう一度押してみるが、やはり開かない。

反応がない!?

「やれやれ、またリモコンの電池が切れたか?」と思い、直接ドアの鍵穴にキーを差し込みドアを開ける。クルマに乗り込んでキーシリンダーに鍵を差し込み、イグニッションキーを回す。

ところが、またもやウンともスンともいわない。

「もしかして、1ヶ月も乗ってなかったから、バッテリーが上がったか?」と思い、何度かキーを回してみるが、セルすら回らず、メーター類のランプも一切つかない。通常のバッテリー上がりなら、メーター類のランプはついて、キュルキュルとセルぐらいは回る。それが室内灯も含め、全てのシステムが一切合切沈黙している。

「ひょっとすると、ついに寿命がきたか?」

私の愛車「ホワイトベース」は、まもなく30歳を迎えるご老体だ。人間ならとっくに引退して天に昇っているので、いつ天に召されても不思議ではない。

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九死に一生を得て蘇る!

半ば諦めながら、JAFに来てもらった。バッテリー残量を計量したメカニックが、「完全にゼロになってますね! 普通はここまでカラになることはないんですがね・・」

「電気系統がいかれて、いよいよ寿命ですかね? なにせ古いクルマですから・・」と力なく聞く私。

「いやいや、ただのバッテリー上がりで、クルマそのものは全く問題ないでしょう」と言いながらメカニックが電源を繋いでくれる。

「エンジンをかけてみてください」と言われ、運転席に乗り込みキーを回す。すると、一発でエンジンがかかった!

「バッテリーを交換すれば、全然大丈夫ですよ」と言われ、ほぼ諦めかけていた私は、九死に一生を得た気分で喜んだ。

バッテリー交換だけで済んだ!

原因はナント「アリの一穴」?

クルマが生き返って、少し冷静になったので改めて質問してみた。

「それにしても、どうしてここまでバッテリーがカラッポになったんですかね? その原因が分からないと、バッテリーを替えてもまたすぐカラッポになりませんか?」

「そうですねぇ、こういう時はだいたいコッチが・・・」と言いながらクルマの後ろに回り、ブレーキランプを見るメカニック。

「ブレーキを踏んでないのにランプが点いてますね。ということは・・・」と今度は運転席の足元に潜り込んでいく。

ブレーキランプが点きっぱなしに・・・

「やっぱりありました! 原因はコレですね」と、黒い小さなゴムの破片を見せてくれる。1cmほどの小さな部品で、まさにアリの巣の入口ぐらいの大きさだ。

この小さな部品が・・・

「ブレーキ・ストッパーラバー」というものらしく、ブレーキペダルに取り付けて、ブレーキランプスイッチを押し込んで、ランプを消すための部品だそうだ。価格は500円ほどで、構造も極めてシンプルなパーツだか、これが割れて脱落すると、スイッチが押されなくなり、ブレーキランプが点きっぱなしになるらしい。

実は大事な役目を・・・

私が不在の1ヶ月間に、この部品が砕けてブレーキランプがつきっぱなしになっていたのだ。ガレージのシャッターが閉まっているので、誰もそのことに気付かず、バッテリーが完全にカラッポになるまで点灯し続けていたのだろう。

こんな小さな部品一つが壊れただけで、このデカいキャンピングカーが、ピクリとも動かない「ただの鉄の塊」と化したのか、と改めて驚いた。

危うく「ただの鉄の塊」に・・・

人体の場合でも

日本人男性のがん罹患数1位は、胃がんや肺がんを抜いて、2015年以降は前立腺がんがトップだそうだ。高齢化や食生活の欧米化、PSA検査の普及などが増加の原因と言われている。

前立腺は、膀胱のすぐ下の尿道の周りにある、男性特有のクルミほどの小さな臓器だ。胃や肺などに比べると何十分の一しかない小さな器官で、普段の生活でその存在を意識することすらほとんどない。

そこにできた癌細胞が、大柄な男の体を蝕んで全体を破壊に導いて行く。しかも厄介なことに、癌になっても自覚症状がなく、自分で気付くことはできないらしい。

そういう意味で、これも「アリの一穴」の例かもしれない。ただ、前立腺がんは、PSA検査で早期発見がしやすい癌なので、早期治療によりアリの一穴からの崩壊を防げる可能性も高い。

検査で早期発見!

企業の場合は?

一方、企業の場合は、「アリの一穴」から崩れた例は、歴史上、枚挙にいとまがない。まだ記憶に新しい最近の事例だけでも、

小林製薬の紅麹サプリメント被害、ビッグモーターの保険金不正請求、ダイハツや日野自動車の認証試験データ改ざんなど、ゴロゴロある。

今は「WECARS(ウィカーズ)」に

2024年に起きた小林製薬の紅麹サプリ事件では、現場の医師から「サプリ摂取者から腎疾患が出ている」と最初の報告を受けてから、約2か月間も「因果関係が確定していない」として、会社は公表や行政への報告をしなかった。この間にさらに被害が拡大し、腎機能障害など多数の入院患者や死亡者が出た。

結果として、同社の会長・社長が引責辞任し、紅麹関連事業からは全面撤退、巨額の製品回収・補償費用を計上した。さらに、国が「機能性表示食品」制度の安全確保策を厳格化するなど、法律・ガイドラインの改定にまで波及した。そして、小林製薬のブランドイメージが大きく棄損しただけでなく、「サプリ」全体に対する消費者の信頼感も低下させた。

サプリ全体の信頼まで損なうことに

他の事件も同様に、顧客からの苦情や現場社員の声、内部通報など、ほんの小さな声を放置し、あるいは意図的に見て見ぬふりをして、やがて「アリの巣」が堤防の奥深くまで広がり、組織全体を蝕んでいった。そして最終的には、社長のクビが飛んだり、他の企業に吸収されたりした。

アリの巣はガン細胞と同じ

取るに足らないクルマの小さな部品、クルミほどの小さな臓器、顧客や社員の小さな声。

大きな全体から見ると、小さな「アリの一穴」に思えることから始まったことが、やがて組織全体の破滅へとつながっていく。アリの巣は、放置するとどんどん広がるばかりで、勝手に消滅することはない。癌と同じだ。

だから、いずれも「早期発見、早期治療」に勝るクスリなし!

何ごとも「早期発見、早期治療」が大切

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