丸の内の「静嘉堂文庫美術館」で開催されている「曜変天目」の展覧会に行ってきた。「うつわソムリエ」になったことで、いろんな展覧会などの情報が入るようになり、出向く機会が増えたのだが、今回もその一環だ。
「曜変天目」という名器が存在するということぐらいは、以前から私も知ってはいた。 たしか、一条ゆかりの漫画「有閑倶楽部」で知ったのが最初だったかも・・・ しかし、実物を見たのは生まれて初めてだ。

有閑倶楽部で曜変天目を知った
初めて実物を間近に見た印象は、
「たしかに美しい!」
あれが偶然の産物なのであれば、やはり奇跡なのかもしれない。現在でも未だにその製法や、ナゼあのような模様が出るのか、解明されていないらしい。従って、再現できないから価値がある。
曜変天目は中国産!?
展覧会に行ってみて、初めて曜変天目のちゃんとした解説を読んで知ったのだが、曜変天目は世界に3つしか現存しておらず、しかもその3つ全てが日本にあり、いずれも日本の国宝に指定されているそうだ。
そしてこれも初めて知ったのだが、曜変天目は南宋時代(12~13世紀)の中国福建省で作られ、その後、経緯は不明だが、日本に渡ってきたものらしい。
3つの曜変天目のうち私が見た「稲葉天目」は、3代将軍徳川家光が乳母の春日局に与えたあたりからハッキリした経緯が分かっているが、それ以前の来歴は良く分からないようだ。
てっきり私は、日本の国宝なんだから、当然、日本で作られたものだと思っていた。 しかし、大昔から日本に来ていたとはいえ、本をただせば中国で作られたものであることがはっきりしているものを「日本の国宝」として扱っているのだ。
「国宝」の定義とはいったい?
そうなると、いったい「国宝の定義とは何か?」という疑問が浮かぶ。今は日本の国の宝だけど、そもそもは他国のものであったものも「日本の国宝」なのか?
かつて大英帝国が世界中から奪取して、今も大英博物館に陳列されている世界の珍品・貴品?を、イギリスの国宝とするようなものではないか? あるいは、日本に帰化した人を人間国宝として認定するのだろうか? ナゾは尽きない。

大英博物館の品々はイギリスの国宝?
文化庁の定義によると、国宝とは、
「重要文化財のうち、世界文化の見地から見て価値が高く、類ない国民の宝たるものとして国(文部科学大臣)が指定したもの」
らしい。しかし、これではよく分からない。では「重要文化財」とは何なのか? これも文化庁の定義によると、
「日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財のうち、歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いものとして文化財保護法に基づき国(文部科学大臣)が指定した文化財」
ということだそうだ。やっぱり、明確な定義は良くわからない。ただ、この定義に従えば、
「日本に所在」していて「世界文化の見地から見て」価値が高ければ、それが日本以外のどこで作られたものであっても構わない、ということか?
実際に、国宝ではないが、「国民栄誉賞」には日本国籍の所持は要件にないので、初代受賞者は中華民国籍の王貞治だ。

国民栄誉賞の初代受賞者は世界の王
人類全体にとって貴重なものは、日本にとっても「宝」
だから、「もともとは、どうこう」などという狭い了見でなく、人類全体にとって貴重なものは、日本が責任を持って大切に保存していく、という度量の広さと考えればよいということか。
我々はそういうつもりでも、いつか「彼の国」が、「これはもともと自分たちのものだから返せ!」などと言ってこないことを願おう。パンダのように・・・

日本で生まれたパンダも中国のもの