アメリカの「NASA」は人類を救い、日本の「NISA」がアメリカを救う?

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ニーサがブームである。

2024年1月から制度変更された、いわゆる「新NISA」について、新聞・雑誌、そしてテレビ番組でも連日のように取り上げられ、今や一般の人の間でも「NISAをやっていないと恥ずかしい」ぐらいの浸透ぶりである。

日本の個人金融資産2,000兆円を貯蓄から投資へ促すための起爆剤として、政府の肝煎りで始まった国家プロジェクト?である。最大で1,800万円もの金額まで投資が可能で、その運用益が非課税となるため、新制度が決まった時には「政府の大盤振る舞い」と歓迎された。しかし、政府がやる政策に思惑がないはずがない。単なる出血大サービスだけでこんな制度を導入するはずがない、と思わないか?

そもそも、この1,800万円という数字、何かに似ていないか?

そう、ひところ世間を騒がせた例の「老後資金2,000万円問題」の際に出てきた2,000万円とほぼ同じ規模である。「公的年金だけでは老後の生活はできず、個人で別に2,000万円は用意しておく必要がある」という金融庁の試算が世に出て大騒ぎになったいわゆる「2,000万円問題」。それを政府が必死で火消しをして、ようやく皆が忘れたころに新NISAができ、「NISAを使ってみんな1,800万円まで貯めよう!」という一大ブームが起こった。

これはどう見ても、将来の公的年金制度の疲弊もしくは無力化、そしてそれを補うための自己責任での老後資金の準備、を促しているのではないか?ゼロ金利の世界で設計された現在の「マクロ経済スライド方式」をベースとする年金制度では、インフレの世界に戻った時には実質目減りが続き、給付額そのものは減らなくとも物価の上昇についていけず、年金だけではますます生活していけなくなる可能性がある。

我々おじさん世代が受給する間に年金制度がすぐに破綻したり激減することはないだろう。しかし我々の子供たちの世代、今の20代、30代の人たちが年金を受け取る40年後、50年後には「公的年金制度はどうなっているか分かりませんよ!」「それまでにちゃんと自分で準備しておいてくださいね」「そのために前々から制度も用意してたんですから」ということではないか。

この新NISAの効果もあって、年初から株価は爆騰を続けている、らしい。らしい、というのは、日本人がNISAで日本株を買っている、という前提がどうも怪しいから。

「つみたてNISA」で日本株を買っている人がどれほどいるのだろうか?ほとんどがグローバルエクイティ、すなわち外国株式のインデックス投信に向かっているようだ。特にアメリカ株のS&P500指数に連動する投信や、全世界の株式指数に連動する投信(いわゆるオルカン=オールカントリー)が最も売れ筋の商品らしい。成長株枠でも日本株より成長力の高いアメリカのGAFAM株などが買われているのではないか?

つまり日本人の虎の子の貯蓄や月々の給料で、日本企業ではなくアメリカ企業の株を買って支えている、という構図になっているのではないか? S&P500はもちろんアメリカ株が100%だし、オルカンも6割はアメリカ株を買う仕組みだ。足元、アメリカ株が堅調なのもオルカン等を通じた日本人の安定資金が下支えしているのも一因なのではないか。日本株はアメリカ株に連動して上昇しているだけで、NISAの資金が日本株の最高値更新の原動力になっているわけではないのでは?

「貯蓄に滞留している日本人の金融資産を投資に回すことで、日本企業に豊富な資金が回り、日本企業ひいては日本全体の活性化を図る」と政府は企図したはずだが、実際は2,000兆円をアメリカに供給して、アメリカを下支えするという皮肉な結果にならなければよいが・・・

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