「全てのタマゴを一つのカゴに入れるな」という有名なポートフォリオ理論の格言が表すように、株式投資の鉄則の一つに「分散」がある。
「もしカゴを落としてしまった時、全部のタマゴがそこに入っていたら全てを一瞬で失ってしまい、明日から食べるタマゴがなくなってしまう。少しずつ別々のカゴに入れておけば、たとえ一つのカゴを落としても、他のカゴに入っているタマゴは残るからそれを食べることができる」。
予期できない何かが起こった時に、一気に全てを失ってしまわないように、少しずつ分散しておけ、という先人の教えだ。
そもそも人間に未来が分からないのは神様が授けてくれた幸福だ。全て先のことが分かってしまったら、今を生きる喜びがなくなってしまうだろう(「ふてほど」の小川さんのように)。だから、分からない未来を無理に知ろうとするのではなく、分からないことに感謝しながら、あらゆる可能性に備える、というのが正しい姿勢だ。
「未来のことは何が起こるか全く分からない。その前提の中で取りうる最善の方法は何か?」ということを考え続け、そして投資においては、「銘柄分散」と「時間分散」という二つの「分散」がリスクを下げる有効な手段になる。
「銘柄分散」とは、先ほどの「タマゴ」の例で言えば、「タマゴ=銘柄」ということになる。一つの銘柄に集中投資すると、もしその銘柄が暴落したり、場合によっては倒産したりしたら全てを失ってしまう。だからいくつかの銘柄に分けて投資する、というものだ。そして究極に銘柄分散をした姿がインデックス(TOPIXや日経平均等の株価指数)に投資する「パッシブ運用」だ。
次に「時間分散」とは、「タマゴ=売買回数」ということになり、売買を一回で全て行うのではなく、何回かに分けて行う、という手法だ。一度に全部を張るのは博打と同じで(博打でもいきなり全額を賭けるようなことはしないと思うが・・・)、投資では機会も分散した方がいい。いくら「今が一番安い買い場だ!」と思っても、決してそこで一気に全財産を投入してはいけない。
そもそも天底をピンポイントで当てることなど不可能で、自分が「いまだ!」と思った値段から更にいくらでも大きく動くものだ。自分が買った瞬間が大底で、その次の瞬間からずっと上昇し続ける、などというのはファンタジーで、そんなことは普通あるハズがない。
自分が買った値段から更にしばらく下がり続け、その間は含み損を抱える。追加資金があればナンピンすることもあろうし、資金がなければじっと我慢強く待ち続ける。そするとようやく上昇に転じて含み損の拡大が止まる。そこからさらに経ってようやく自分の買値を上回って含み益になる、というのが一般的な買入れ時のパターンだろう。或いは、安値で待っていたがその値段まで下がることはなく、結局買えなかった、というパターンのどちらかだろう。
「買い」の場合はまだ分かりやすいが、「売り」の場合はタイミングをとるのはさらに難しい。銘柄そのものの良し悪しではなく、値段だけの判断でやらなければならないので。株価の上昇を受け、そろそろ売ろうかと思っていても、いつ売ればいいのかタイミングがつかめず、結局、売り逃がしてしまうことも多いと思う。そこでいい方法がある。