損保会社は談合事件の処分内容さえも「カルテル」している?

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損保大手4社が「企業向け保険料を事前調整していた問題」、いわゆるカルテル問題で、業務改善計画書を金融庁に提出したそうだ。そして報道されている内容を見て驚いた。というより呆れた。

4社で役員132人に対し減俸などの処分を行い、政策保有株式(いわゆる事業会社との持ち合い株)の全廃、などが改善計画の中心となるようだ。「異例の大規模処分」という側面だけが新聞などで報じられているが、その内容についてはあまり指摘されておらず、強い違和感を覚える。

なぜなら、役員処分の内容が、各社とも「社長の月給を3か月間50%減額」と全く同じ! 政策保有株の全廃時期も2030年か2031年とほぼ同じ! 減俸の期間も幅も、株を売るタイミングまで全て同じとは、どこまで横並び体質の業界なのか・・・

当然、こんなことは事前に連携を取り合って相談して決めなければできないことで、「自社だけで考えたけど、たまたま結果が一緒でした」なんてことはあり得ない。「皆で同じ内容にすれば大丈夫。どこかが突出しないようにこれからも皆で仲良くやりましょう!」とばかりに、「保険料事前調整問題」と同じ構造を、その処分内容についても行っているのではないか。常識では考えられないような行為だが、これぞまさしく損保業界の体質を表しており、そのことに疑問を感じることさえないのがこの業界の病根の根深さを物語っている。

本来、個社ごとに事情も違うし、社内規定で処分の量刑の基準も異なるはずだし、反省の度合いでも処分の軽重で各社ごとに違いが出るはずだ。それが皆一緒! こんなとこまで調整、横並びとは・・・ 体質改善などしません!と宣言しているようなものなのに、金融庁もなぜ指摘もせず、こんな横並びの改善計画を黙って受け入れているのか?

損保業界は大手4社の超寡占で、抜群にまとまりのいい業界だ。金融業界の中でも珍しく業界トップ企業(東京海上)の統率力がよく効いている。争うべきライバルというより、兄貴的な存在として2番手以下企業が慕っている節さえある。なので東京海上が言えば業界全体がそれでおさまる、というある意味なんとも羨ましい業界だ。

メガバンクでは「赤」「青」「緑」で熾烈な競争をして、ダントツ企業がないがゆえに概ね対等な関係にある。

生保業界でもトップの日生に対し2位の第一はことごとく逆のことをやって、日生を追い抜くことだけを悲願としており、決して素直に言うことを聞いたりしない。

証券業界に至っては、ネット証券や銀行系証券の台頭で、かつての野村をトップとする団結力はなくなり、業界内で「対面vsネット」、対面証券内でも「証券系vs銀行系」でことあるごとに揉めていて、業界全体としての統率など望むべくもない。

そんな中で損保業界の団結力は異様だ。「週間東洋経済」2024年1月27日号に、東京海上、損保ジャパン、三井住友海上の社長3人が宴席で一堂に会し、密談をする場面が描かれているが、まさに密室での情報連携?が違和感なく普通に行われているのだ。(3社長しかいない場面での会話がどうして週刊誌に書かれているのかわからないので、真実かどうか知る由もないが)

金融庁さん、損保各社の「処分内容」をカルテルで処分すべきではないですか!?

 

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