今回のキャンプブームの遥か以前、十数年前にキャンピングカーを買った。
といっても大型の本格的なものではなく、ミニバンを改造して天井がポップアップになって、一応、小さな冷蔵庫や流し台がついている「なんちゃってキャンピングカー」である。下の娘が小学生になって、「これからは家族で毎週キャンプだ!」というタイミングで、たまたま出物があったので衝動買いした。
そして、家族でキャンプに行く時や、関西への帰省時に高速道路のパーキングエリアで一家4人で仮眠したりする時には確かに重宝した。しかし、年間10回を目標にした家族でのキャンプも、一度も目標を達成することがないまま子供たちは大きくなり、誰も親父とキャンプに行くことはなくなった。
その後、キャンピングカーとしての機能はほとんど使われることはなくなり、ただの乗用車として月に何度か近所のゴルフ練習場に行くのに使われるだけの存在になっていった。累計でキャンプに使った回数はどんなに多く見積もっても100回には至らない。車の値段が○○万円で、使ったのが〇〇回だとすると、1回当たり〇〇万円にもなるのか!と下世話な計算をして少し後悔をしたことも・・・
しかし、である! 本当の活躍の時はむしろこれからなのかもしれない。
確かに「家族の季節」は終了したので家族みんなでワイワイ!という世界はもはや望むべくもない。だが、ここからの「一人の季節」ではこの本格的すぎない「なんちゃってキャンピングカー」が実はとても重宝するのではないか、ということに気づいた。
私の自宅がある千葉県はアウトドアにはもってこいの土地柄である。ゴルフ場の数は全国で一番多く、私が「家族の季節」にお世話になったキャンプ場もたくさんある。また、海に囲まれた県なので、釣りはもちろん、ボート、ジェットスキー、スキューバ、サーフィンなどのマリンスポーツも身近にできる。
これらに必要な道具をすべて積んでおけば、気が向いたときにいつでもどこでもなんでもできるではないか! 私の遊び道具を全て詰め込んだ「動く大きなおもちゃ箱」としてこれからは活躍してもらおう!
例えば、キャンプの帰りに良さげな港を見つけたら、ヒョイと車を止めて、常備してあるルアーロッドで軽く投げてみる。あるいは、釣りの前日から海沿いの駐車場で車中泊をして、日の出前から魚とバトルする。ゴルフ合宿に行って、ゴルフ後に夜釣りを楽しむとか、いろんな組み合わせで様々なアウトドアの楽しみができる。それらのための道具を常に愛車に積み込んでおいて、場合によってはそのまま車で寝て、ということが可能になる。
名前も正式名称の「セレナ」から、遊びの基地・拠点という意味でガンダムの「ホワイトベース」に改名するかな?(色はシルバーだけど・・・)
ホンモノのキャンピングカーだと、大きすぎて運転しづらいし、遅いし、駐車スペースを探すのもひと苦労だ。一方、最近流行りのSUVでは「おもちゃ」が全部入りきらない。なので、大きさ的にもミニバンぐらいがちょうどよく、運転も普通の乗用車と同じ感覚だ。しかもこのセレナ、いや「ホワイトベース」のエンジンは、かつての「シルビア&180SX」と同じ日産の名機「SR20型」が積まれており、スポーツカー並み?の走りをする。
また、小さいながらも冷蔵庫が付いているので、釣り餌の青イソメなどの「ムシ類」を前夜から保存しておける。家庭の冷蔵庫に「ムシ」を入れるのはさすがに抵抗があるが、キャンプ用ならさほど気にならない。また、シャワー水栓で釣りのあとすぐに真水で手を洗ったり、ホースを伸ばして長靴についた砂を洗い流したりできるのも釣り人には地味に便利だ。
ただこのクルマ、娘とほぼ同い年なのでハタチを超えている! 走行距離も12万キロを達成し、かなりのご老体である。エンジンは優秀なのだが、この時期の日産のCVT(無段変速機)は故障しやすいので有名で、ある日突然動かなくなるケースが多いらしい。私もいつその日が来るか、とずっと気にしながら乗っていたが、それがついに来た! 高速道路を走行中に突然回転数が急上昇し、その後はアクセルを踏んでも逆に回転数が上がらず速度も出なくなった。幸い完全停止はせずに、時速20~30kmぐらいでは走れたので、そのままディーラーに持ち込んで大事には至らずに済んだ。
しかし、その修理代がナント60万円! 20年落ちのクルマに、である。CVTだけでなくCVTオイルが通るラジエーターや、CVTを制御しているコンピューターも一緒に交換しなければならないらしく、一大修理だ。修理工場のメカニックの人もみな口を揃えて「修理はやめて、その金額を次のクルマの購入資金に充てたらどうですか?・・・」とおっしゃる。
ごもっとも! 合理的に考えれば当然そうなる。しかも私は、不合理なことが大嫌いな生粋の合理主義者である!(ハズ)。
が、しかし、である。このクルマ、私が見捨てれば、そのまま廃車になってしまい鉄屑と化す。エンジンはすこぶる元気なので、私が大手術してやれば、まだまだあと何万キロも走れるかもしれないのに。実際、キャンピングカーは普通の乗用車と違い、10万~20万キロ走ったクルマがいくらでも売られている特殊な世界なのだ。
だったらオレが最後まで面倒見よう! そして最期を看取ってやろう! そういう気になり、周囲の反対を押し切って大手術に踏み切った(なんて合理的なんだ!)。ちなみに、修理を担当してくれたメカニックさんの経験の中でもベスト5に入る高額修理だそうだ(他のケースは、外車で部品代が非常に高いから高額になったようで、これだけ古い日本車にカネをかける不合理な人(ただのバカ?)はいないようだ)
おかげで手術後の「ホワイトベース」はすこぶる元気になった。アクセルを踏み込んでも以前のように滑る感覚がなくなり、ダイレクトで車輪に伝わっている感じだ。これでこれからは「いつ止まるか」と気にすることなく、エンジンをブン回しながらまだまだ走って、20万キロ達成だ!