広尾に座禅ができるお寺がある、ということは以前から知っていた。しかし、ネットにはほとんど情報がなく、Facebookには上がっているようだが、未だにアカウントを持っていない私には見ることができず、詳細がわからない。そこで、思い切って飛び込みで行ってみた。
朝の6時半ごろ、広尾商店街の突き当りにある祥雲寺の大きな門を抜け、左に曲がると右手に「香林院」がある。

早朝の人気のない広尾商店街

その突き当りに祥雲寺の門が・・・
香林院の境内に入ると、右手に「坐禅」という看板が掛かった建物があったので、扉を開けて中に入ってみた。

香林院の門

境内に入ると座禅道場?が
案内も何もないので近くにいた人に聞くと、初めての人は入口に備え付けられているノートに名前と電話番号を書いて、出席した日付にチェックを付ける、そうだ。
会場は15畳ほどの和室を二間続きにした広さで、正面にキレイな和風の庭園を望める。部屋の壁に沿って2枚重ねの座布団が15組ほど「ロの字型」に並んでいて、部屋の真ん中は空いている。

座禅会の会場
どこに座ってもいいそうなので、「新人」らしく隅の方に遠慮がちに陣取る。誰からも何の説明もないので、とりあえず入口でもらった「坐禅のやり方」というリーフレットを読んで準備をする。

もらったリーフレットで独学する
時計やネクタイを外し、靴下を脱いで裸足になる。図に書いてある座禅式のあぐらを組もうとしたが、初心者にはとても無理なので普通のあぐらで断念する。

本格的なあぐらは素人には難しい
腰を立て、背筋を伸ばし、両手を丹田の前で組む。目は閉じずに視線を1mぐらい前方の床に落とす。こんな感じで形はいいようだ。
次に呼吸は、鼻呼吸で1から10まで数えながら行う。「ひと~~~」でゆっくり深く息を吐き、「つ」で吸う。「ふた~~~」で吐き、「つ」で吸う。これで10まで数えたら、また1に戻る。これを座禅の間繰り返すことに集中し、雑念を払うのだ。
なんとか基本作法を覚えたころ、7時になるといよいよ座禅会が始まる。但し、言葉は一切発せられず、拍子木が1回打たれると、それを合図に皆さん手を合わせる。続いて「おりん」が4回鳴らされると、あぐらのままお辞儀をする。そしてそのまま各々、座禅を始める。
私も一応、さっき覚えたばかりの「にわか作法」で何とか形をつくる。しかし、瞑想とは程遠く、横目で他の人たちの様子をうかがい、自分がおかしくないか、次は何をすればいいのか、ずっと観察し続けた。
参加者は、床の間の前に鎮座しているベテラン風の方を筆頭に10人ほど。意外と皆さんお若く、私が上から2~3番目ぐらいか。学生風の人やガイジンさんもいる。みなラフな服装で、夏場なのでTシャツ短パンの人も多い。出勤前のスーツ姿のオジサンは私一人であった・・・

床の間の前の席にはベテランの方が
みなそれぞれのスタイルの座禅を組んで、私以外は瞑想に耽っている。ガイジンさんも、慣れないあぐらを組んでザゼンのポーズをとっているが、なぜか目線は床ではなく天井を向いている。学生風の人たちもマジメに、みな無言で、言葉どころか一切無音の静寂な時間が流れる。
そんななか、あろうことか、私のおなかが鳴ったのだ。「グゥ~」と! ちゃんと朝ご飯も食べてきたのに・・・ それでも皆さん動揺されることなく、私の腹の虫のことなど完無視で座禅を続けられていた。
15分ぐらいたったころ、ついに「肩たたき」?が始まった。座禅と言えばやはりこれだ! 木の平べったい棒(警策:けいさくと言うらしい)を持った住職さんが厳かに立ち上がり、畳の上を静かに歩いて回り、ある参加者の前で止まる。

写真はイメージです
するとその参加者は両手を畳について頭を下げる。そこに警策で右肩を2回、続いて左肩を2回、ピシピシ!と叩く。それが終わると、再びお辞儀をして座禅に戻る。
住職さんは再び畳の上を歩き回り始める。私の前まで来る。次は私を叩いてくれるのか⁉︎と期待したが、無慈悲にもそのまま素通りされ、私の隣の人が叩かれた・・・

写真はあくまでイメージです
これで1回目の「肩たたきタイム」は終了だ。これが全部で4回あって、そのすべてで叩いてもらった人もいたのに、結局、私は1回も叩いてもらえなかった・・・ これでは座禅の経験も半減?だ。
あとから住職さんに「叩かれる人はどうやって決まるのか?」と聞いてみた。姿勢が悪いとか、雑念を持っていそうだとか、それを見極めて叩いているのか?と。すると、なんと答えは「本人が希望したから」であった!
「肩たたきタイム」が始まった時に、座禅を解いて、手を合わせていれば、「叩いてください」という合図なのだそうだ。そうとは知らない私は、毎回、叩いてもらえるかドキドキしながら待っていたのだ・・・

大仏さんの座禅の形は美しい
25分で1回目の座禅が終了し、5分間の休憩を挟んで2回目の座禅が始まる。この休憩時間中に入替も可能で、1回目だけで帰ってもいいし、2回目から参加してもいいようなので、出勤時間の都合に合わせて柔軟に参加できる仕組みだ。全体で1時間弱で8時前には終了する。これだけやって、すべて無料なのである。
さらに、座禅が終了した後、希望者には隣の部屋で冷たいお茶が用意されていた。せっかくなので、そこで和尚さんや修行中のお坊さんたちと少し話をした。
広尾のど真ん中に、8000坪の敷地内に臨済宗のお寺が4つ(祥雲寺・香林院・霊泉院・東江寺)並んでいること。座禅会をやっているのは、臨済宗の中ではこの香林院と谷中の2カ所だけで、土曜日以外、毎日やっていること。安倍首相が座禅に来たいと言われたが、受け入れが大変なので断ったこと、などなど・・・

YouTubeにもアップされてるようだ
いかん、話しに夢中になっていたらもうすぐ始業時間だ! 今日は遅刻だ・・・
最後に、座禅会に参加される際の私からのアドバイスを。「朝食はしっかりと!」(笑)
(ここまで読まれた方は、左下の『最後まで読んでやったよ!』ボタンをぜひ(^^))