先日、人生で初めて、手術と入院というものを経験した。これまで盲腸にすらなったことがなく、一度も体にメスが入ったことがない完全なる「処女体」である。そこにいよいよ初めてメスを入れるということで、一週間ぐらい前からだんだんと気が滅入り始めた。

聖心女子大学の隣にある広尾の日赤病院へ
手術当日、9時に広尾の日赤病院の入院受付窓口に着く。そこで、午前中に手術を終え、その日は個室病棟で入院し、順調であれば翌日の午前中には退院できるとの説明を受ける。すべて初めてのことなので、こちらは緊張した面持ちで説明を聞く。
そして早速、最上階にある特別個室!に案内され、部屋の中で看護師の問診を受け、術着に着替え、車椅子に乗せられて、いよいよ手術待機室へ移動する。待機室で車椅子から手術台に乗せ換えられ、横になって天井を見つめたままの状態で自分の番が来るまで15分ほど待つ。初めての手術で緊張気味の私の気持ちを和らげようと、横で看護師さんが色々と話しかけてくれる。そしていよいよ私の順番がきて、天井を眺めたまま手術室に運ばれる。ドラマなどでよく見る天井だけが動いていくシーンと同じだ。
手術室では、執刀医のほかに2~3人の助手の人がいて想像以上に大掛かりのようだが、ずっと上を向いたままなので周囲の詳しい様子は分からない。腕や指に血圧計や酸素計などを取り付けられ、麻酔をされて、そしていよいよ人生初の手術が始まった!
白内障で1泊2日の手術&入院体験
手術開始からずっと数を数えていて、ちょうど600ぐらいになったころに、「はい、終わりましたよ~」という先生の声が頭の方から聞こえてきた。こうして私の人生初の「白内障手術」は無事、終了した。

白内障手術で初体験!
今や日帰りでやる人も多い白内障手術で、人生初のメスが入ったのは角膜部分に2mmだけだ。その隙間から水晶体を吸い出し、人工レンズを入れる、というのが今の白内障手術で、術式が格段に進化しており、手術そのものの失敗確率は0.1%程度だそうだ。
手術前の説明では15分~20分かかると言われたが、実際は半分の10分弱で終了した。
眼だけの局部麻酔なので意識はずっとあり、手術中も目は見えてるし、耳も聞こえている。ただ、目には強力なライトの光が当てられているので、眩しいだけでメスなどの器具は見えない。
手術中に先生が、「今からレンズを入れます」とか、要所要所で説明しながらやってくれるので不安が和らぐ。何をされているのか分からないままより、ずっと安心する。事前に手術の手順を聞いているので、いまはどの辺まできているのかも大体わかる。
ただ、途中で看護師と先生の会話が聞こえてきて、
看護師「さっき、○○さんから電話があって、今日は熱があるので念のため休むそうです」
先生「コロナかな?」
看護師「本人は違うと言ってますが・・」
先生「いや、多分、コロナだろう。おれがうつしたかなぁ・・」
オイオイ!業務連絡は後にして、今はオレの手術に集中してよ!(笑)
1泊8万円の個室の泊まり心地は??
あっという間に手術が終わり、昼前には部屋に戻って、そこから翌日の午前中に退院するまで、あとはひたすら部屋で過ごすことになる。そこでの約24時間のために8万円!を払ったので、たっぷりと堪能せねば。

エグゼクティブフロア!
今回泊まったのは、「エグゼクティブフロア」と呼ばれる最上階にある「特別個室病棟」だ。他のフロアの「一般病棟」にも相部屋のほかに個室もあるが、「特別個室病棟」には個室しかない。部屋のタイプは4種類あって、最高ランクの部屋は、よくドラマで政治家先生が仮病で入院しているような大型バス付きの50㎡超の部屋で1泊24万円也!そして私が泊まった1泊8万円の部屋が「特別個室病棟」では最もリーズナブル?な部屋である。それでも、トイレとシャワー、洗面台、ソファーなどがついていて広さも20㎡とワンルームマンション並みだ。大きな窓からは都心のビル街が見え、十分、優雅な気分に浸れる。

個室の窓からは都心の風景が

部屋にトイレとシャワーが完備
因みに、部屋の料金だが、パンフレットには「1日の室料」として、¥40,700と書かれていた。なので、最初に部屋を選ぶとき、「4万円は少し高いけど、1泊だけだから、まぁいいか」と思って申し込んだ。すると、パンフレットの注書きに小さく、「室料は、健康保険法に基づき、午前0時を境として1日として計算いたします」と書かれているではないか・・・ つまり、普通に宿泊入院すると、当然、午前0時をまたぐので、「1日分」の料金の2倍、すなわち¥81,400かかるということなのだ! さすがに1泊8万円は高過ぎると思ったが、逆にそれはどんな世界なのか見てみたいという気になり、結局、申し込んでみた。

エグゼクティブフロアの談話室からの風景
確かに個室だと、他人のイビキに悩まされることもないし、夜中にトイレに行くのも気にせずに済む。消灯時間も関係ないので、深夜までテレビやスマホを見ていられるし、酒以外は何を飲み食いしてもいいので、病院というよりホテルで過ごしている感覚だ。それでいて食事はベッドまで運んでくれるし、痛みがあったりするとすぐに薬を持ってきてくれるので、安心感もある。また、特別個室病棟を担当するスタッフさんたちは、病院の中でも選ばれた精鋭の方々なので、一般病棟の個室に入るより、ホスピタリティが高いそうだ。私はあまり違いを感じられなかったけど・・・
そして退院するときには、看護師さん達が総出で?エレベーターで見送ってくれた。それでもやはり8万円は高いと思うけど・・・
因みに、食事の内容は、特別病棟でも一般病棟と同じで、やや物足りない。そこでここでも「特別メニュー」なるものを申し込んでみた。1食¥1,200+税を出すと、通常の倍ぐらいの量の食事が出てきて、これなら中年オヤジには十分な量であった。

一般食

特別食
手術後は別世界に?
白内障の手術で人工レンズを入れると、それまで白く霞んでいた視界がくっきりするだけではなく、近視も、遠視も、そして乱視も、一定程度治るのだ。単焦点レンズだと全ての距離がハッキリ見えるわけではないが、近距離焦点レンズの場合でも裸眼で0.5ぐらいは見えるようになった。もともと0.1以下であった身からすると、格段によく見える感覚で、部屋の中での日常生活ならメガネなしでもなんとかなる。さすがに屋外に出る時はメガネが必要なので、完全にメガネから解放されるわけではないが、濁りがなくなった分だけ視界はクリアだ。自分では気づいてなかったが、白内障の時は目にモヤがかかっているだけでなく、色が全般に黄ばんで見えていたようで、術後は紙などが真っ白に見えるようになった。

メガネとのつきあいは続くが・・・
こんなことならもっと早く手術をしていればよかった、と今では思うが、決断するまでは「目玉を切るなんてとんでもない!」と思って尻込みをしていた。
手術後1週間は、髪も顔も洗えない、酒も飲んじゃいけない、3か月は目薬を投与しろ、と看護師さんからは言われたが、術後の経過もよかったので、先生からは3日でいいと言われた。私はそれすら守れず、病院を退院したその足で向かった昼食の店でビールを飲んだが(笑)

退院後のビールは格別!?
人生初の入院で病室で過ごした2日間(実質は24時間程度)は思った以上に快適であった。今までは、人生の最後は病院ではなく自宅で迎えたいと思っていたが、1日4万円払って、この部屋で安らかに最期を迎えるのもいいか、という気になった。